ちきりん氏のマーケット感覚を身につけようを読んだ後に、文系エンジニアが考えたこと

ちきりん氏のマーケット感覚を身につけようを読んだ。

以前からちきりん氏のブログは読んでおり、特に以下のエントリが一番印象に残っていた。


誰に評価されたい? 上司? 会社? それとも市場? - Chikirinの日記

今回の本は、ちきりん氏がずっと書きたかった内容と言っていたが、筆者自身も上のエントリについて深く掘り下げて欲しいと思っていたので、普段本を予約などしたことがないのに、Kindleで予約をした。この本はベストセラーになると何故か確信している。

もうすでに3回ぐらい読み直している。筆者の過去を振り返ってみて、マーケット感覚を使って行動したことあるかを考えてみた。筆者は今はアプリ開発エンジニアであるが、プログラミングを勉強し始めたのは約3年前で、大学生の終わりぐらいの時だ。

ある程度名が知れている大学で、文系だったので普通に大企業の総合職に入るかと思ったが、意識が高い系をこじらせてしまい、海外に留学したりベンチャーインターンをして、そっち側が何となく合うのが経験を通してわかった。この行動も、ある意味市場からのフィードバックを受けて自分がなんの仕事が合うかを探してた気がする。

また、筆者は2回就活をしているのだが、1年目は大企業ばかりを受けた。これは、自分が大企業に合うかどうかを実験的に確かめるために受けたのだが、結果はダメだった。若手の社員とはすごい話があって気に入られるのだが、最終面接あたりで保守的なおっさんにことごとく落とされた。根本的に大企業は厳しいのだと悟った。これも市場から学べた感じ。

で、どうしようかと悩んでいたのだが、以前からIT系のニュースをよく見ており、大企業には入れないと確かめることができたら、ITの世界に飛び込もうとなんとなく思っていた。そして、先に述べたように、大企業に入れないとわかったため、ITの世界に飛び込む決意ができたのだ。

なんとなく経営者になりたいという思いがあったのだが、経営者でもプログラミングができないと話にならないという意識の高い記事をよく見ていて、それに影響されてまずはプログラミングだな、と思ったのが始まり。それが3年前の話なのであるが、今も意識の高い記事では相変わらずプログラミングを学べとしか言ってなくて、何も進歩してないな、と思う時がある。だが、筆者としてはすでに3年前プログラミングを学んでいるから、そういう意味では過去の決意はいい方向に運んでいるなあと思う。はじめはPHPを学んでいたが、プログラミングを学ぶにつれてアプリ開発のほうが今は価値が高いと分かり、勉強をしている。

ここでちきりん氏の話に戻そう。なんとなくではあるが、筆者もマーケット感覚的なもので行動をしている感はある。就活においても、大企業、海外、ベンチャーを見て、いろいろ実験的に確かめて来た。ちきりん氏は市場からフィードバックを得るのが大事と言っていたが、それに近いことをしていたと思う。

また、価値があるものを探し、行動するということも大事だと思った。これはプログラミングを通して学ぶことができている気はする。エンジニアの価値は3年前に勉強をし始めた時よりももっと上がっているし、これからもしばらくは下がらないと思う。価値が下がりはじめたら、いち早く次に価値が何かに移ろうと考えている。

だが、ちきりん氏のいうマーケット感覚とは、労働市場に限ったことではない。この点をわかりやすく述べているのが素晴らしいと思った。筆者も労働市場だけに目を向けるのではなくて、どういったアプリに価値があるか自分で判断し、作っていくこともしていきたいと思う。また、プログラミングだけに限らず、単純に物を売るという行為もしていきたいと思った。

市場から学ぶというのは、仕事ありきの考えに近いと思った。筆者はプログラミングを勉強し始めるのが20歳を過ぎてからで少し遅かったので、学校でゆっくり学ぶより、いきなりアルバイトとして働いたのだが、これはかなり良かった。いきなり仕事を通して学べたので、これはまさに市場から学ぶと同義と言えるだろう。

ちきりん氏の講演会にも行くことにした。

 

 

 

意識の高かった学生(笑)として、これから意識の高くなる人へのアドバイス

意識高いという言葉は、非常に興味深いと筆者は思っている。

意識の高い学生(笑)という形で使われることが多く、頑張っていそうだが言っていることや行動が伴っていなかったり、薄っぺらい学生に対してそのように言及されることが多い。


意識の高い学生(笑)とは - はてなキーワード

筆者も実は大学時代意識が高い時期があった。筆者の意識高い行動を列挙してみる。

インターン支援団体に所属

・不動産のベンチャーで営業として三ヶ月間インターンシップ

・オーストラリアに九ヶ月間語学留学

・以前からツイートを追っていたベンチャーの社長に連絡を取り、その社長の家に転がり込み、そのまま営業として三ヶ月間中国でインターンシップをする。

数としては少ないが、「国内インターン」「海外インターン」「海外語学留学」という、意識高い行動の代表といえるものをこなしてきた。行動力が最大の強みだったと自覚をしている。

今回筆者が文章を書いた理由としては、意識の高い学生(笑)を批判するためではなく、意識の高い学生(笑)だった筆者が、過去の経験を元にこれから意識が高くなる学生に対して、意識の高い学生(笑)にならないためにどうすればいいかをアドバイスするためである。

意識が高くなることに対して筆者は批判を全くしない。だが、薄っぺらい行動を繰り返して結局何も残らない状態になったり、周りから冷ややかな目で見られないようにする必要はあると思っている。「意識の高い時期という人生のボーナスステージ」を無駄にすることなく、最大限実りのあるものにしてほしいのだ。

以前、メタップスの佐藤氏が以下のようなブログを書いていた。

現実を直視しながら理想を持ち続けることの難しさ、人生の「賞味期限」 | メタップス社長のブログ

佐藤氏がいう、人生の「賞味期限」というのは、先に述べた「意識の高い時期という人生のボーナスステージ」とほぼ同義だと思っている。要するに、後先考えずに自分が思ったこと、実現したいことに対して突き進めるバカになれる時期のことだ。

ここでいうバカとはとてもいい意味で使っていて、先を考えないからこそ、自分が想定している力よりも何倍もの力を出せ、時としてものすごい結果を残すことができるのである。筆者も大学からテニスを始め、関西で優勝を何回も経験したし、全国大会にも出た。物凄く集中力が研ぎ澄まされるときにしかなれない、ゾーンと呼ばれる状態にも入った経験がある。要するに、後先考えずにテニスに熱中できたからこそなせることだったのだ。そのパワーが、そのまま意識の高い行動へと昇華し、海外へ目を向けていくことになった。

筆者の意識の高い行動は、テニスのように成功するかと思いきや、全然そうではなかった。三ヶ月インターンをした、といっても実際はむしろ三ヶ月で辞めてしまったのだ。行動力は爆発的にあるが、長続きしないという問題が発生してしまい、結局意識の高い行動をしているだけの、薄っぺらい学生になってしまっていた。また、様々な影響を受けて本を読むようになったが、読んでいた本は7つの習慣や思考は現実化するといった、いわゆる自己啓発本であった。ネットだけの情報で意識が高くなっていたので、どうしてもそういう本を手にとってしまうのだ。

ここで、薄っぺらい意識の学生の特徴を以下に列挙してみる。

・大学に価値を見出していない

・学問の専門書を読まずに、自己啓発本やその類の本を読む

・スキルのつかないよくわからないインターンシップをする

・とりあえず海外

・以前仲良かった友達を自分は成長したと勘違いして切り捨てる

・有名な人に会うことを目的としている

・ビジネス塾に通う

要するに、意識の高い行動(笑)をしているにもかかわらず自分の蓄積がほとんど残らないことが問題なのである。筆者の意識の高かった行動は、ほとんど蓄積されず結果として意味のない行動が多かったように思える。これから意識が高くなる学生が肝に命じておいてほしいことは、知識、経験を「蓄積」させていくことである。専門性を身に付けろということだ。

例えば、「意識の高い時期という人生のボーナスステージ」でプログラミングを学ぶことはとても良いことだと思っている。学問として学べるし、仕事にも直接つながるし、知識、経験を「蓄積」させることができるのだ。先のことを特に考えていないバカな時期に、結果として後々役に立つスキルを身につけるということが重要なのだ。表現が難しいが、帰国子女と似たような感覚かもしれない。知らぬ間に英語が喋れていたのと同じように、意識の高かったバカな時期にプログラミングに夢中になっていたおかげで、知らぬ間に必要とされるスキルが身についていた、という状態に持っていくのが理想的である。

プログラミングは一例にすぎないが、知識、経験を「蓄積」させることに意識が向いていれば、インドネシアが伸びそうだから、イスラム文化、現地語を学ぶために三年ぐらい住むなど、将来への投資として適切な行動が取れる可能性が高くなる。だが、現実問題として意識の高い学生予備軍は、ネットだけの情報を元に意識が高くなってしまうので、量産型意識の高い学生(笑)になってしまう可能性が非常に高い。これは構造上の問題で学生本人のせいではないと思っている。今のネット社会は、意識の高い学生(笑)を生み出してしまう環境が整っているので、それを防ぐために意識の高かった学生(笑)が過去の失敗を世に残し、それを反面教師にしてもらい、取り返しのつかない行動(大学を辞める、勉強をしない、友達を切り捨てる等)をしないように啓蒙していく必要があると思っている。運良く良い人に出会えて適切な行動が取れればラッキーであるが、大半はいい人に出会えずネットだけの情報で満足してしまうパターンの人が多い。

また、意識の高い時期は人生のボーナスステージであり賞味期限でもあるので、それがいつか切れる日が来る。筆者の賞味期限が切れたのは、24歳くらいの時である。ちょうど切れかけの時期にプログラミングに出会い、なんとかボーナスステージを生かすことができた。そして、先に紹介した佐藤氏の考え方が非常に重要になってくる。賞味期限が切れたとしても、そこで諦めるのではなく現実世界を直視しながら、馬鹿だった時期の理想を持ち続けるフェーズへ移行したと考えるのである。

筆者は今はコツコツと知識、経験を「蓄積」させ、現実世界を直視しながらも、いつか馬鹿になれる分野が見つかると信じて生きている。斜に構えて生きることは楽で安全地帯にいるだけの、ある意味思考停止状態なので決しておすすめはしないし、今の若者にはそうなってほしくない。一回の人生、馬鹿になった者勝ちだと思う。現実を直視しながら馬鹿になろう。